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糖尿病について

糖尿病内科

糖尿病は、強く疑われる方も含めれば、本邦においては数千万人にも及ぶ方がおられる国民病、現代病です。まさに「糖尿列島」といえましょう。
背景には、強いストレスを強いられがちな社会生活や、夜間にも容易に高いカロリーの食品を入手できる社会環境、運動不足に陥りがちな日常生活といった社会背景があると思われます。また、加齢に伴い増加する2型糖尿病の引き金になる肥満は、基礎代謝(体内でのエネルギーの消費力)が低下するにもかかわらず、運動量はむしろ減り、摂取するエネルギーは減らない、という加齢性の要因もあると思われます。

糖尿病は、初期には症状が必ずしも明確ではありませんが、早期の発見や治療が遅れますと、心臓や脳、腎臓や眼といった重要な臓器の機能を廃絶させる恐ろしい病気であります。

糖尿病は、何らかの原因でブドウ糖(血糖)を上手に細胞に取り込めなくなり、血液中のブドウ糖が増えてだぶつき、高血糖となる慢性疾患です。血糖濃度のいつも高い状態が続くと、血管をはじめとする全身の組織に悪い影響が及んできます(糖毒性)。
糖尿病は、大きく「1型」と「2型」の2つのタイプに分けられます。

1型糖尿病

インスリン(血液中の糖を組織に取り込ませ、血糖値を下げる働きをしている体内ホルモンの一種)を産生する膵臓の細胞(膵β細胞)がある時から壊れていき、インスリンが分泌されなくなってくる疾患です。若いうちに発症することの多いのが特徴です。
原因は、はっきりとはわかっていませんが、免疫系の異常反応により、自らの細胞が攻撃される「自己免疫」によるものと考えられています。 1型糖尿病では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極度に低下するか、またはほとんど分泌されなくなるため、血中の糖が異常に増加し、重篤な症状を引き起こしかねない状態になります。

2型糖尿病

生活習慣による影響が強く、日本人に最も多いタイプの糖尿病です。加齢や遺伝的要因のほか、食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレス、妊娠などが要因となります。なかでも食べ過ぎと運動不足による肥満は、2型糖尿病の最大の引き金と言われます。日本における糖尿病患者の95%以上は、2型糖尿病です。
以下では、この2型糖尿病についてご説明いたします。

糖尿病(2型)とは

糖尿病とは、体を動かすエネルギー源であるブドウ糖を細胞がうまく取り込めなくなって、未処理の糖が血液中に溢れてしまう病気です。
健康な人なら、インスリンというホルモンがしっかり働き、血液中のブドウ糖を細胞に送り込んでエネルギー源にしたり、あるいは脂肪やグリコーゲンという物質に変えて筋肉や肝臓に蓄えたりします。このインスリンの分泌が足りなくなったり(インスリン分泌不全)、足りていてもうまく細胞に作用しなくなったりした状態(インスリン抵抗性)が糖尿病なのです。重度の糖尿病になってしまうと、血糖コントロールが難しくなってきますし合併症も招きやすくなりますので、早期に発見し、治療を開始することが大切です。

糖尿病(2型)の検査、診断

糖尿病の診断にあたっては、血液検査や糖負荷などによる慢性高血糖の確認、および症状、臨床所見、家族歴、体重歴などを参考にして、医師が総合的に判断します。
食事の時間に関係なく、随時の血糖が200以上であれば、糖尿病と診断されます。
また、HbA1c※(ヘモグロビン・エーワンシー)の値が6.5以上あれば、糖尿病の疑いが強くなります。食事と血糖値の関係をみるために、糖負荷試験を行うこともあります。

また、糖尿病は初期のうちは自覚症状がほとんどありませんので、患者様の病状を把握するためには血糖やHbA1c※(ヘモグロビン・エーワンシー)の値を定期的に検査していく必要があります。

※HbA1cとは
血糖値が高くなると、ブドウ糖が赤血球中のヘモグロビン(Hb)と結合します。これがHbA1cと呼ばれるもので、血糖値が高ければ高いほど、この値も高くなります。ヘモグロビンの寿命が約4ヶ月であるため、HbA1cは過去1~2ヶ月における血糖の平均的な状態(血糖のコントロールの状態)を示すと考えられています。HbA1c値は糖尿病治療において最も大切な管理指標となっており、合併症の進行との関連性も深く、7.0%未満(国際標準値NGSP)が一応のコントロールの目安となります。


糖尿病(2型)の治療

糖尿病は現在のところ完治させることはできませんので、一生つき合ってく必要があります。しかし、悲観的になることはありません。糖尿病そのものは治せなくても、血糖値を正常に保ち、それと同時に体重や血圧、血清脂質も良好な状態に保てば、糖尿病による合併症、すなわち糖尿病細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)や大血管障害(冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患)を起こさずに、あるいは進展を阻止して健康を保持することは十分に可能です。そして、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、および健康な人と変わらない寿命の確保もできるようになるのです。
そして血糖値を正常に保つ上で重要になるのが、継続的な「血糖コントロール」です。血糖のコントロールの推移の指標が、HbA1cです。

食事療法と運動療法

医師の指導のもと、まずは食事療法と運動療法を行います。
糖尿病の治療の根幹は食事療法と運動療法です。
とくに食事内容の再確認(その都度メモしておくことが望ましいです)と毎日の総エネルギー摂取量の調整が重要です。
とくに食事内容の再確認と毎日の総エネルギー摂取量の調整が重要です。
食事療法のポイントは、朝昼夕食の摂取を規則的にして間食を控えることで、毎食を腹八分目として、野菜や根菜の食物繊維、海草、魚を主体に、魚を主体に、脂肪食は控えめにて、「糖尿病をよくして健康なからだを取り戻す」意識をもって、食事をいただくときはよく噛んで食することを心がけることです。
また、毎日30分程度の有酸素運動は必須ですが、運動することは日々忙しく仕事をしているととても大変なことです。仕事帰りの帰宅途中に気持ちの余裕があれば、一駅区間は歩いてみることから運動を始められるだけでも「立派な運動療法」になります。室内での活動をできるだけ活発に心がけることも有効です。
これらの食事療法や運動療法は、現実には実行することが難しいことも多いものです。しかし、あきらめずに続けることが重要です。一時的にコントロールが乱れることがあっても、あきらめずに再び継続していくことが必要です。「継続は力なり」です。
食事療法と運動療法だけで、血糖が正常値になる患者様もいらっしゃいます。
何よりも実践、継続に勝るものなしです。
これだけで正常値になる患者様もいらっしゃいます。

糖尿病が進行したケースだったり、食事・運動療法だけでは血糖値がうまく下がらなかったりするような場合には、内服薬による治療やインスリン療法を行う必要が生じてきます。

経口の内服薬による糖尿病治療

糖尿病の経口の内服薬は、「インスリンの分泌を増やす薬」、「インスリンの働きをよくする薬」、「糖の吸収を遅くする薬」、「糖の排泄を促す薬」に大きく分けられます。
最近では有効な治療新薬として、小腸から分泌されるインスリンの分泌をうながすホルモンであるGLP-1の働きを高めるDPP-4阻害薬や、腎臓・尿細管での糖の再吸収を阻害して血糖値を改善させるSGLT2阻害薬が登場しており、糖尿病治療薬の選択に幅ができ、以前よりもより良い血糖コントロールが達成できる時代になってきています。

インスリン療法による糖尿病治療

内服薬の治療に加え、注射により体外からインスリンを補って、健常な人の血中インスリンの変動をできるだけ忠実に再現する治療法です。インスリン療法は糖尿病の最終的な治療手段というわけではありませんが、良好な血糖コントロール状態を保ち、合併症を防ぐために、また患者様の膵臓を保護するために、糖尿病治療の比較的早い段階から開始するケースが増えています。

こんな症状のある方は受診をお勧めします

 ●健診等で「血糖値の異常」を指摘された
 ●このごろ目立って太ってきた
 ●いくらでも食べられる
 ●急に甘いものがほしくなる
 ●よく食べているのに痩せる
 ●ひどく喉が渇く
 ●尿の回数が多く、量も多い
 ●尿の臭いが気になる
 ●いつも残尿感がある
 ●下腹部が痒い
 ●手足が痺れる
 ●足がむくむ
 ●やけどや怪我の痛みを感じない
 ●視力が落ちてきた など

糖尿病の合併症

糖尿病では、きちんと「血糖コントロール」をしないと、血液中に溢れたブドウ糖が全身の血管や神経にダメージを与え、様々な合併症を招くようになってきます。
合併症というのは、ある病気が元になって起こってくる、別の病気や症状のことです。
糖尿病の合併症には、三大合併症と言われる「糖尿病網膜症」「糖尿病性神経障害」「糖尿病性腎症」や大血管障害(心筋梗塞や脳梗塞、大動脈や末梢動脈の疾患など)があります。
高い血糖の値が持続することにより、神経や血管の障害が起こっています(糖毒性)。特に糖尿病による血管の障害は、心臓や脳といった生命にかかわる重大な合併症を引き起こす恐れが高くなります。

糖尿病の合併症

糖尿病網膜症(目の合併症)

目の内側には、網膜(目から入った光が像を結ぶ場所)という膜状の組織があり、光を感じる神経細胞が敷きつめられています。高血糖の状態が長い期間にわたって続くと、ここに張り巡らされた細い血管が動脈硬化による損傷を受け、血流が悪くなって栄養と酸素が十分に供給されず、視力が弱まってきます。進行してしまうと出血や網膜剥離を引き起こしたり、時には失明に至ったりするケースもあります。また、白内障になる人も多いと言われます。糖尿病網膜症は、かなり進行するまで自覚症状が無いことも少なくないので、「まだちゃんと見えているから大丈夫」といった自己判断は禁物です。糖尿病の人は、目に特に異常を感じなくても定期的に眼科を受診し、検査を受ける必要があります。

糖尿病性神経障害

主に足や手の末梢神経が障害されます。その症状の出方は「手足の痺れ」「やけどや怪我の痛みに気づかない」など様々です。ほかにも胃腸の不調(下痢や便秘)、顔面神経麻痺、立ちくらみ、発汗異常、ED(勃起不全)など多様な症状が現れてきます。

糖尿病性腎症

血液を濾過して尿をつくる腎臓の糸球体(しきゅうたい)という部分の毛細血管が傷害を受けて機能が損なわれ、だんだんと尿がつくれなくなってきます。やがては人工透析と言って、機械で血液の不要な成分を濾過し、人工的に尿をつくらなければならなくなったりします。すると週に2~3回、定期的に病院などで透析を受けるようになるので、日常生活に大きな影響が及んできます。現在、人工透析になる原因の第1位が、この糖尿病性腎症です。この合併症も自覚症状が無いままに進行しますので、早期に発見するためには、定期的に腎機能を検査する必要があります。

大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患など)

糖尿病により血糖値の慢性的に高い状態が続くと、細い血管だけでなく太い血管もダメージを受けます。動脈硬化を起こした血管は狭くなり、時には詰まってしまうこともあります。血液の流れが悪くなったり、完全に詰まったりすると、狭心症や心筋梗塞などの心臓病※をはじめ、様々な病気を引き起こします。
※糖尿病の人は血糖値が正常な人より、約3倍も心臓病の発症リスクが高いことが知られています。

糖尿病の大血管障害の原因

大血管障害は、高血糖・高血圧・脂質異常症(高脂血症)・肥満(特に内臓肥満)の4つの組み合わせで起こりやすくなります。これは「メタボリックシンドローム」の4つの要素と同じです。
その他にも、喫煙・加齢・運動不足・ストレス・不適切な食生活などが動脈硬化の原因となります。
したがって、動脈硬化を予防するためには、糖尿病の治療はもちろんのこと、肥満や高血圧、脂質異常症など、他の生活習慣病も同時に治療していくことが大切です。

糖尿病の大血管障害

肥満の方は、減量のために食事を腹八分目に抑え、適度な運動を心掛けます。
必要であれば薬物やインスリンによる治療を行い血糖をコントロールする必要があります。

心筋梗塞

心臓に酸素や栄養を供給している冠動脈が硬化・狭窄し、冠動脈の内腔が狭くなったところに、血液の塊(血栓)が詰まって血管を塞いでしまうと、酸素が供給されなくなった部位がダメージを受け、心筋梗塞を発症します。通常なら、心筋梗塞が起こると胸が強く締めつけられるような激しい痛みが生じますが、糖尿病による神経障害を併せ持っている患者さんでは、痛みを覚えないケースもあります(無痛性心筋梗塞)。

脳梗塞

脳の血管が詰まってしまい、詰まった箇所の先に血液が供給されなくなってしまうのが脳梗塞です。そして閉塞を来たした場所に応じて、様々な症状が引き起こされます。半身の麻痺や言葉の障害などが代表的です。

末梢動脈性疾患

足の血管の動脈硬化が進行し、動脈の狭窄や閉塞によって血流が悪化することによって引き起こされます。足やふくらはぎが痛くなって運動ができない、休み休みでないと歩けない(間欠性跛行)などの症状が現れてきます。生活・行動範囲も制限されてきます。さらに症状が進むと、潰瘍や壊疽(えそ)を起こしてしまい、足を切断しなければならなくなるケースも出てきます。